からかわテープ

歌と演奏 からかわまこと


このたぴ、からかわ氏が演奏に使用した楽器群一覧!

Drums(E区立M六中、WEST st.、GF st.)/ Korg 指ドラム / 本、箱、床
/ エレキ Bass / ただの木 Bass / フォーク・ギター Bass / 偽物フェンダー・ストラト
/ フォーク・エレキ Guitar / クリスマス・Guitar / カワイのピアリーナ E.Piano
/ 新島弥生 Up-Right Piano / Korg PolySix / Roland JUNO 106 / Prophet 600
/ DX7s / 様々な Percussion達 / ドラム・マシン … Oberheim、Roland TR-606、KORG

Voice and Vocals



録音に使用した機材群一覧!

AIWA AD-7400 / National RS-450 / SONY MX-7
〜1982
これらを使用してダピングしながら音を重ねていったのだ!
1982 〜
TEAC TASCAM-244 / YAMAHA 8ch. ミキサー / SONY PCM
これらを使用してピンポンしたり、複数トラックダウンをして、たくさん音を重ねていった!
これにより、実際は 4ch.だが、事実上の 12ch.ぷん以上を手にいれたことになるのだ!



…以上のように、録音が長期間にわたっており、
年代によって、録音器材や状況に差があるため、
曲によって音質などに著しく違いがあるのをご了承ください。



PRODUCED BY からかわまこと for ひつじ Songs. 1978〜1992









『からかわテープ』完成記念独占インタビュー


-今回のアルバムの持つ意味は、どういったものなのでしょうか?
一言で言えぱ、これはぼくにとっての「McCartney」1)だ。
こう言えば、分かる人は分かってくれると思う。


-ということは、いわゆる自作自演ということですか?
自作ばかりではないが、演奏や歌はすべて自分一人でやったものを選んである。
あのアルバムが恐ろしく評判が悪かったのも考慮して 2)
そういうイメージもそっくり受け継 いでるよ(笑)。
ただ、こっちは短期間ではなく、制作時期は長期間にわたっている。
一番古い作品は1978年物から、1993年まである。
そういう意味では、多重録音おたくの集大成という感じもあるね。
なかには、昔みんなが聴いた事があるようなものもあるから楽しんでもらえると思うよ。


-「人に歴史あり」ですね。
っていうか、ここに収録したものは全部好きなものだものだけど、
だからといっていつまでも、これが全てというわけじゃない。
人は、日々変わってゆくものだからね。
だから、この 手の作品を、こうした形で集める必要があったんだ。
ちゃんと過去の作品にも敬意を払い、
そうした上で、あらためて次の段階へ進もうと思ったわけだ。


-それにしても随分バラエティにとんでますよね?
ちょっと、「曲」とは呼べないようなのもあるよね。企画物と言うやつだ。
昔のものには、特にそういうのが多い。内輪うけだね。
実は、そういうことを他人にはよく指摘された よ。
それでとても悩んだ時期があって、ああいった作品を無効にしようかと思った頃もある。
ところが自分も忘れている頃に、
ある日、たまたま新しい仲間と一緒に、聴いてみようということになってね、
聴いてみると、これが凄く楽しかったんだ。
とっても新鮮でね。
それで、こういうカラーも大切にすべきだったんだ、ということに気が付いて、
もう一度、蘇らせることにしたんだよ。
それで、せっかくだから、この手のを集めてアルバムを一つ作ろうと思ってね、
どうせなら自宅録音風作品の集大成ということで、「McCartney」にしようと思ったわけさ。
でも当時のは、カセットで録ったものとかもあって、
アルバム用に、マスタリングするのが大変だった。
でも作業自体は、昔の自分を今の自分がプロデュース してるようで、とても楽しかったよ。
それに、方向性がはっきりすると今まで見えなかっ たものがすっきりしてね、
それまで悩んでいたのが嘘のように、がぜんやる気が出てきたよ。
とりあえず、ここで締めてそれから、さあ次だ!とね。


-「McCartney」で彼が自分の過去と訣別したように、そういう意味合いもあると言 うことですね?
そのと・お・りっ!(笑)
そんな大それたものでは無いが、
やはり良くも悪くも、過去には縛られていたのかもしれないね。
「いきおいじゃ、15年前には、かなわねえよなあ」と思っていたし、
あまり、ああいうのが好きじゃなかった頃もあったわけだから。
でも、あれらの作品があって今があるわけだし、
それをちゃんと認めた上で、また新たに始 まるんだ、ということなんだよ。


-タイトルが『からかわテープ』というのは、またどうして?
これはねえ(笑)昔から、なにかとテープの編集をするのが好きでね、
みんなも経験 あると思うけど、好きな曲を、好きな曲順で、
一本のテープによく編集したりしてたんだ。
車の中で、よく聴いたりするだろ?
「ベストセレクト」というやつだ。
それを高校時代、吹奏楽部の部室で、みんなで聴いてたりしたんだけど、
そのテープの名前が「からかわテ ープ」というんだよ。
で、その選曲の中に自分のオリジナルも混ぜてた、というわけで、
なにげに聞いてると「おっ?」ということになる。それで徐々に内輪に浸透していったんだ。
…それで今回アルバムを編集するにあたって、その愛着のある名前を継承しようと思いついてね。
それが自分にとってのすべての始まりだった訳だから。


-では、今回このアルバムに入っている曲の中にも、そういうのがあるわけですか?
5曲くらいは、そうだと思う。


-当時はどの様なシステムで録っていたのですか?
まだ廉価なマルチトラックなど 出てなかったと思いますが?

テープレコーダー2台のダビングで録ってた。
とつても大変だったけどね、長くやってるとコツがつかめてきて、
いい音で割と早くできるようになるんだよ。
そういう点では、当時としてはクオリティーの高い音な筈だ、と自負してるんだ。
その後は、例の TEAC-244 3)というやつを1982年から使っている。


-それでは、アルバムの収録曲についてのライティングやレコーディングについて、一言で答えてください。
一言でなんて無理だ!


-1曲目の「ブロローグ for スクールコーポ」
これは1980年に、大阪にいたときにそこで初めて録音したものだ。
これはちょっとね、環境が変わってすぐだったというのもあるが、
ダイナミックレンジのとりかたを間違えてね、随分ノイズが多いね(笑)。
一人暮らしを始めての初の作品だから、オープニングにはいいかと思って、
タイトルもそれらしいものにしたよ。
これは、ちょっとラテンぽいのをやってみようかと思ってね、
もともとパーカッション奏者でもあったわけだから、 そういうのを録ってみようと思ったんだけど、
何故か、そういう楽器を一つも持っていなかったもんだから、
部屋にあった本や、ダンボール箱や、牛乳瓶や、食器など駆使してそれらしい音にしたんだよ。
そして、それらしいようなリフなどを、アコ G.で重ねたんだけど…リフについてはコメントを差し控えよう(笑)。
で、録った場所、すなわち大阪での住居が「阪南スクールコーポ」 4)という名称だったので
記念にタイトルにつけたんだ。
こ れは、ダビングで6回位重ねている。


-「To To To Song」
みんな、タイトルの由来を知らないらしい。子供の頃、こういう歌詞で歌ったんだがなあ。
イントロはちょっとふざけ過ぎたな。
これのドラムは M六中 5)というところのもので、それを録音できるウォークマンで録ってきたものだ。
この曲はちょっと長いのが難点だね。


-「非難 Go Go」
これは、曲としては初めて人々に浸透した曲だったね。
高3のときに友達の家で即興的に創って歌ったんだ。
その後、大阪を出る直前の1981年に録音した。
なんと、こ れもダビングで録ったんだよ!
確か7回だったと思う。
べースに聴こえるのは、フォークギターをマイクで録ってトーンを絞ったものだし、
アイディアと経験がものをいった訳だ。
このときのドラムは、例によって「本と箱」だったんだけどね、
このアルバムの為のリミ ックスを1989年にしたときに、リズムが少し弱いと感じて、
リズムマシンのボタンを、指で叩いてドラムパートを重ねたんだ。
これは、人間シンクロといってね(笑)とてもお もしろかったよ。
詞の内容については、ちょっとコメントを避けたいね(笑)。
曲はどっかで聴いたことあるなと思ったら、例の曲だと判明したので
思いっきりパロディにしちゃったんだけど、人によっては怒るかも知れないね。


-次は「わるぐち」ですが、これもダビングですか?
そう!ちやんとステレオだよ。高2のときの録音だ。
よほど腹でも立ててたのかねえ?
電話で人に聴かせたりしたな。Part2の方は、あれは北海道弁だよ。


-次の「Everybody Knows」の唐突な様子は、どうでしょう?
(笑)。この曲のドラムは、もともと全然別の曲のものでね、
それを他の楽器をすべて消去して、また録り直してこの曲にしたんだ。
その元々の曲が、少し複雑だったのを整理しつつ編集したので、継ぎはぎのパズルみたいになった。
かえって構成が分かりにくくなった、というふしもあるけどね。
当時は、いいリズムマシンもあまり無かったし、生ドラムをいちいち録ってくるのも大変だったから、
もう既に録音してあるドラムパターンを有効利用したという訳さ。
詞の内容については…「すべてお見通しさっ」ってことだね(笑)。
簡単でかっこいい曲なので気に入ってるよ。


-「Super Monophonic」
1983年に、今でも割と人気がある機種なんだけど、
Roland JUNO-106 というシンセを手に入れてね、当時としては優れものだったよ。
それが、6音ポリフォニックが基本なんだけど、
モノモードにすると妙に分厚い音になって良かったので、早速使ってみたん だ。
ドラムは例によって「有効利用」なんだけど、なぜかだんだん早くなる(爆笑)。
JUN0は残念ながら、後に金に困って売ってしまったんだけど、今考えると惜しいことをしたね。


-いよいよ問題の作品「ザ・ケンタッキー」ですが?
これは「ドラムマーチのアカペラ」という超前衛的な作品だ。
高3の時に作ったものだ。
どうしてこんなこと思い付いたのか良く覚えてないんだけど、何故か録ったんだ(笑)
当時の作品で一番有名だったよ。
これはダビングだからね、大変だった筈なんだけど、
そう、時間がかからずに完成した覚えがあるよ。
タイトルの「ケンタッキー」というのは、べつに鳥肉に関係あるわけじゃなくて、
このドラムマーチが「ケンタッキー大学」の ものなんだ。
それを高校時代、吹奏楽部のマーチングで使って「行進」していたんだよ。
ただし、このアカペラ「ケンタッキー」は『パート2』といってね、
高3の時に自分で作 ったイントロを、オリジナルの「ケンタッキー」の頭にくっつけてあるんだ。
このイント ロは、英語の授業中に
『ぐるぐる回るやつ』6)や『新・コールサイン』 7)と一緒に思いついたものでね、ノートに楽譜が残ってるよ(笑)。
コールサインに続いてる曲は、高3の時の定期演奏会でやった「アディオス・ムーチャチョス」という曲だ。
…実際『パート 2」を使って「行進」してたのは1979年だけだけど、
オリジナル「ケンタッキー」と、他の2曲は、最近も使ってたらしい(笑)。
凄いことだよね。
まさに!「人に歴史あり」 だね、こりゃ。


-引用していただいて光栄です。さて次の…
「印象派野郎」だね。この作品の一番おもしろい部分はタイトルだ。
あとは気にしないほうがいいよ。


-以上が「ネガティブ・サイド」とされてますね?
そう。このアルバムを編集したときに、
いくら意図的に、こういう雰囲気を出したにしても、
ちょっと極端すぎて誤解をまねくなあ…と弱気になってね、
それならば、アルバム全体が企画物であるということを、
分かりやすく提示したほうがいいと思って、種別に命名することにしたのさ。
我ながら、なかなか良いネーミングだと思うよ。


-次の「ミラージュ 30秒」というのは、とても変わったタイトルですが?
これはね、とある学校 8)に行ってた時に、確か録音の実習かなんかで、
例のエリマキ トカゲの「ミラージュのCM」に、新たに音楽をつけるという課題が出て、
その為に作っていったデモテープなんだ。
30秒と決まっていたんで、ちゃんと計って録音した。
あのCMのビデオを持ってる人がいれば分かると思うけど、
この音楽を映像と合わせてみればぴったり合う筈だよ。
これとは別に、これを元にして
クラスのみんなで学校のスタジオで録り直したバージョンもあって、
それはそれでかっこ良くて好きだったね。
人選に恵まれて、割とその気になれば、作品のイメージが膨らんで、
より良いサウンドになるということを実体験した訳だからね、
それまで多重録音ばかりしてた自分にとっては、ある意味カルチャーショックでもあったね。
残念ながら、そのあとそういう経験は6年後までなかったんだけどね(笑)。


-初めての肯定的な創造的経験だったということですね?
そうだね。
もともと音楽を始めた頃にはそういうことを信じてたんだけど、
いろいろあったので暫く忘れていたんだ。
とてもいいことを思い出させてくれたよ。


-それで「ポジティブ」コーナーの第1曲目を飾っているという訳ですか。
そう!少しは改心したよ(笑)。


-次の「僕の名前を誰かが呼んでいる」
この曲は、このアルバムで、初めて出てくるまともな曲だ(笑)。
これも紆余曲折あってね、
初めてこのコード進行を手掛けたのは1984年だから、もう9年も経ってるね。
その後いろいろアレンジを試みたんだけど、なかなかこれだと言うものがなくてね、
やっと90年に決定したんだ。
聴けば分かると思うけど、結局、2曲合体して1曲にした。
その 時のドラムは、例によってまた「有効利用」だったんだけど、
これの場合はどうもしっくりこなくてね、
結局92年に録り直してしまって、そうなると他の楽器も気になってきて、
最終的には、プロフェット 9)以外の楽器は、事実上のリメイクとなってしまった。
だから録音としては、この曲が一番新しいと言うことになるね。
イントロの部分も、あるバンドの為にアレンジした曲 10)のものだったんだけど、
いまいち不人気だったんで自分の曲にくっつけたものだし。
そうやって考えてみると凄い曲だな(笑)。


-詞も今までに無いものですね?
うん。割と簡単にできたんだけど、ちよっと「くさい」かなあと思って躊躇していた部分もあってね、
でも、曲のイメージにあった詞を付けられたので、気に入ってるよ。


-次は「ケンタッキー '84」です。
初めてドラムマシンを手に入れたときに、早速プログラムしてみたのがこれだったんだ。
Roland のものでね。
いま聴いてみると「ヤオヤ」 11)系の音でおかしいんだけど、
「アカペラ・ケンタッキー」に比べると、エレクトリックな感じがして、なかなか効果的 だよね。
エフェクト音も、例のJUN0で入れたから、「Roland スペシャル」だ(笑)。
ちゃんと「ロール」が「オープンロール」でプログラムしてあるというのも、
パーカッション奏者ならでは、だよね。
…どうも、このドラムマーチには、みんな特別な感慨があるんだ。
高校時代の、ある意味シンボルみたいなものだからなあ。
今度やってみるときは、いよいよ全部生楽器で録音してみようと思ってるんだ。
それが完成した時には、またみんな聴いて喜んでもらえると嬉しいな。


-ところで「コールサイン」に続けて一瞬始まる曲は?
気にしないでくれ!本当は、あの曲は、あのまま5分位続くんだ(笑)。
著作権上の問題もあるし、ばかばかしいので削除したよ。
さあ、次いってみよう(爆笑)!


-「悲しみのヘビースモーカー」
これは、いまだに自分の曲だという感じがしないんだ。
この中では唯一、ライブで演 ったことのある曲だよ 12)
簡単な曲なのでみんな覚えてくれて、何故か人気がある(笑) 。
簡単だというのは良いことだよ。


-シングル・バージョンとなってますが?
これは何故か、随分たくさん録ったね。
自分のバンドでやってたこともあるから、そのメンバーで録ったのもあるんだけど、
自分一人でやったのも、たまたま残っていてね、
今回のアルバムのポリシーにぴったりだったので、ミックスし直して入れることにした。
それを、アルバムの「先行シングル」として配ったんだ。


-「恐竜に捧げる歌」
ある時期、この手の曲調に凝った頃があってね、似たようなものがたくさんできたこ とがあった。
似たようなのが幾つもあってもしょうがないから、その中の主な曲をまとめて1曲にしたんだ。
このシリーズの集大成にしようと思ったんだよ。
それで、せっかくの集大成だから
自分にとっての壮大なメッセージソングにしようと思ったんだ。
聴いた人も、それぞれ、それなりに思うところあってくれれば、嬉しいと思うよ。


-タイトルにもそういう意味が込められてる訳ですか?
人間、その気になれば何でもできるぞ、って感じだね。
自分もいろいろ浮き沈みあったし。でも未来は、まんざらでもない筈だ、と。


-ところで、この曲も最後に、とある曲がワンフレーズだけ出てきますね。
これは、最後に歌入れをやっていたときに、
たまたま歌ったらおもしろかったので、そのまま残したんだよ。
最後のコードが同じだったので、ついこの曲が口から出てきた。
こんな曲をこんなところに挿入する人も、まず、いないだろうからおもしろいかな、と思ってね(笑)。
屈折した自分の心理状態を現わしてるようでおもしろいよね。


-「In The Middle Of The Night」
いよいよアルバムの佳境だね。
「わるぐち」から始まって「ケンタツキー」に続いたアカペラものの、ある意味、集大成的なものだ。
アカペラといえば、やっぱりこれだからね、いつか、やってみたかったんだよ。
でも、曲の中の一部分だけのコーラスなら、ある程度簡単にできるんだけど、
一曲通して、となるとちょっと難しくてね、ちゃんと譜面にしたんだ。
けど、結構面倒だったから、もう当分やらない(笑)。
これは、例のTEAC-244で ピンポン録音をして、
バッキングだけで、合計13回ぐらい声を重ねたんだ。
このカラオケは1984年にできたんだけど、
その後が、紆余曲折あってなかなか進まなくて、
結局、最終的にメロディーが決まって歌入れをしたのは1992年だったよ。
初めは全然別の曲だったんだ。
でも、あまり良くなかったのでボツにしてしまって、
また新たにメロディーをつけ直して新曲にしようと思ったんだけど、もっと「うだつ」が上がらなくてね(笑)、
結局、その2曲の良い部分を合体させて完成したんだ。
でも、こうなるのが必然だったという感じで、いい曲になったので良かったよ。


-いよいよアルバム最後の曲です。
これはね。
プロフェットの音色をいろいろいじくってた時に、こういうアラビアっぽい(笑)のが出てきて、
そのまま急いで録音したんだ。
その後「シタール」についての文献を読んだ時に
「タンブーラ」 13)というのは音の立上がりが鈍いというのを見てね、
それならギターでも逆回転にすれば、
立上がりが鈍くなるから音が似るだろうと思ってやってみたら、結構おもしろい音になったんで、
それにダビングしてインド風にしてみた訳な んだ。
とくに最後の曲だという理由もないんだけど、
混沌とした様子が締めに相応しいよ うな気もして、いろんな意味での締め括りとしたよ。
「McCartney」も、妙な民族もので終わってるしね。
パーカッションは、Oberheimのリズムマシンを、例によって指で叩いたものだよ。


-タイトルの「ジミー」と「ピーター」というのは誰のことですか?
こういう音楽をやつている著名なミュージシャンといえばお分かりいただけると思い ます(笑)。
その二人と共に「酒でも飲みましょうかね、ヒヒヒ」14)ということだね。


-以上ですが、繕構よくぞここまで出し切ったという感じですね?
そういう訳でもないよ。
今回は、あくまでこのアルバムのコンセプトにあってたものを選んだのであって、
他にも、まだたくさん作品は残ってるんだ。
ただ、オリジナルの「からかわテープ」シリーズに入ってたもので
今回、このアルバムに入れなかったのも少しあるんだけど、
それだけは、ちょっと発表するに忍びないものなので、ボツにしたよ。
自分にとっては愛着があるんだけど、あくまで「自分にとっては…」ということだからね(笑)。


-ところで、このアルバムの前に限定で「R&Rアルバム」 15)を出してますね?
それはね、今回この「からかわテープ」をまとめてたときに、
ふと、あまりにも「多重録音おたく」然としすぎてる、ってことに気付いてね、
ちょっと、イメージが偏ってしま うのも困りものだと思ったので、
「真面目に歌ってる」アルバムも同時に作って、バランスを取ろうと思ったんだ。
それで、実際出来上がってみると、自分自身わりと吹っ切れて ね、
無理にみんなに配ることもあるまい、と思ったので、限定で知人などにあげることにしたという訳さ。


-全曲「カバー」ですね。
単純に、歌うことに重点を置いたんだ。
でも、アレンジも気にいってるけどね。
録音も、4ch.しか使ってないから、244の良さがとても良く出てると思うし、
なかなかいい作品だ と思う(笑)。
これも、ある意味、集大成って訳だね。
基本は押さえてるぞ、ってね。


-アレンジは、どれも意味ありげですが?
これは、全部、分かる人には分かる、有名な曲の「パクりアレンジ」になってるんだよ。
よく雑誌のインタビューなんかで、有名ミュージシャンが
「あれはこうしてみたんだ」なんて載ってるじゃない?
そういうので、おもしろそうだからそのうちやってみよう、と思 ってたのとか、
身内受けしてた「定番アレンジ」とかを全部試してみたという訳さ。
知ってる人なら、全部大笑いできること請け合いだよ(笑)。


-最後に、「McCartney」について少々お聞きしたいのですが、御自身かなり、こだわっていられるところをみると、
やはり相当聴き込まれた様子がありますね?

いやあ。そうなんだよね(笑)。高校時代の一時期、毎日のように聴いてたよ。
とりとめがなくて、なんだか訳の分からない曲とかも、たくさん入ってたりしたんだけど、
なんだか憎めなくてね。
どうして人が、あそこまで嫌うのか分からなかったよ。
まあ、皆が聴いたのは1970年当時で、それに比べると、
もう自分が聴いたときは「華麗なる復活」を遂げた後だから、
また感じ方も違ったんだろうけどね。
でも一人で楽器を全部演奏して、それでアルバムを一枚出すなんて、凄い発想だと思ったよ。
たまたま、そのときの心情とぴったりあってたのかもしれない。
一人で全部出来れば、煩わしいことなんてもう無いぞ、ってね。
他人とものを創るのは、とても大変だからね。
まあ、今はそうも思わなくなったけど(笑)。
音楽的落書き、というラフな発想も、なんだか興味深くて、新鮮だったね。
そう考えてみると、自分にとって、
音楽に対する考え方の、かなりな部分に影響があったんだと思うよ。


-いよいよ、本当の最後になってしまいました。
長かったね。
アルバムの制作期間ぐらい長い(笑)。
何か質問し残したことがあればどうぞ。


-そもそも、こういうインタビューを、アルバムの付録にしようとしたのは何故なんですか?
実はね、知ってる人なら知ってると思うけど、
「McCartney」にもインタビューが付録 についてたという、種明かしがあるんだよ。
しかも、自問自答でね。
だから、つまりは、このプロジェクトすべてが、ある意味パロディー風であるというわけなんです。
質疑応答も、 外人翻訳風で、楽しんでいただけたと思います。
音楽、インタビュー、ともに楽しんでいただければ、私にとってこんなに嬉しいことはありません。
ありがとうございました!


[注釈/解説]

1.ポール・マッカートニーが、1970年4月に、ビートルズ脱退宣言と共にリリース した、初のソロアルバム。
歌とすべての楽器を一人で演奏し、自宅のスタジオでレコ ーディングしたものである。

2.上記の事柄にも関係するが、ビートルズ時代とはあまりにも異なる、そのクオリティ ーの低さから、
期待を裏切られたような気がしたファンや評論家などからは、目茶苦茶に酷評された。
デモテープのようなものや、訳の分からないインストものなどで溢れていて、
熱心なファンでなければ、聴くに耐えない曲ばかりだと言われ、
ファーストアルバムがこういうものだったせいで、ポールは著しく信用を失ったとされている。
さらに、ビートルズのメンバーの中でも初の本格的ソロアルバムだったので、爆発的 に売れてしまい、
始末が悪いことになった。

3.1982年頃発売された、カセットテープを使用する4チャンネル・マルチトラック テープレコーダー。
現在多数発売されている、いわゆる「トラッカー」のはしり的存在である。TEAC社の製品で、通称タスカムともいう。

4.大阪府南河内郡河南町にある、学生向けアパート。
通称コーポと呼ばれ、大学のなかでは「学マン」と共に、密かに有名だった。
後に、コーポ出身の漫画家が「ヤンマガ」に「キャンパス・クロッキー」という漫画を連載したが、
そこに出てくるアパートは、コーポがモデルになっており、建物の作りや、人々の暮らしの様子も、そっくりである。
残念ながら、現在はない。

5.東京都E区にある中学校。ある吹奏楽団の練習場として使用されており、
その関係上、出入りが可能だったので、ドラムの録音にたびたび使用された。

6&7.高校時代の吹奏楽部で、新たに「マーチング」や
「ドリル」(曲を演奏しながら行進して人文字や図形を作る・フットボールの試合などで良く行われる)
を始めるにあたって指揮者より依頼を受け、書き下ろした
「ドラムマーチ」と「コールサイン」(ドラムマーチから曲に入る合図)。
各人が、その場所で、前後左右に回りながら、奇声を発するというフォーメイションなので、
通称「ぐるぐる回るやつ」と呼ばれていた(その後は、単純に「こりょう」と呼ばれるようになった)。
本文中にもある通り、時間も無かったので、英語の授業中に作曲された。
そんな悠長なことを日頃やっていたものだから、その後大事件が勃発した。

8.何故、この語旬に注釈が要るのか、そのこと自体、謎とされている。

9.シーケンシャル・サーキット社製のシンセサイザーで、
「オーバハイム」と共に「アナログ・プログラマブル・ポリフォニック・シンセサイザー」の名機と言われている。
ただし、ここで使用されているものは、その名機の廉価普及版で、「600」である。

10.ドラムス、コーラス、プロデュース、などで参加している「西尾光夫&FLAT」と いうバンドのこと。
ある曲のイントロ用に考えたが不評を買い、再びオリジナルアレ ンジのイントロに戻し、
宙に浮いたイントロのほうをこの曲に使用した。

11.ローランド社製のドラムマシン「TR-808」のこと。
古い機種なので暫く忘れられていた時期もあったが、フィル・コリンズがヒット曲で使用し、一躍有名になり、
今ではバラード系や、ハウス系の曲には欠かせないものとなった。
ここで使用されたのは、その廉価普及版「TR-606」で、音色が似ている。

12.「斎藤バンド」の時に、ドラムを叩きながら、「FLAT」のときに、キーボードを 演奏しながら、
計3回ほど、ライブで歌っている。

13.通常シタールは旋律を奏で、タンブーラはコードの持続音を鳴らし続けるとされる。

14.水戸で吉田忠孝氏が言った、といわれている有名な台詞。

15.タイトルを、「幻想のR&R名曲」といい、全十曲入り。
一曲だけ、吉田忠孝氏が 「べースと歌」で参加してるのを除いて、すべての楽器と歌を一人で演奏している。
そういう点では、「からかわテープ」とコンセプトが似ているが、
こちらのほうは、演奏や録音がロックっぽく単純になっており、よりストレートな印象がある。
というのも、その後デジタルの 8チャンネル器材を購入する計画があり、
「244」が本格的 にメインで使用される最後の.機会となるだろう、ということが分かっていたため、
ピ ンポン録音などをせずに、
4チャンネルそのままで「244」が可能な限り、良い音で録音しよう、という記念的意味合いも含んでいたからであり、
結果的にそのことが、作品自体にとっても良い効果を生んだようである。



by からかわまこと for ひつじ Songs Co.1993








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