Memories of 1996


1995年 11月 、4年間に渡る接客業を辞め、
後に
ひつじ SONGS!という名称になる作品集の レコーディングに入った。
二度と後悔することの無いよう、自分のやりたいことを 思いっきりやろうと思っていた。
初めのうちは 少し気張ってしまい、空回りの感も有ったが、徐々に形がつかめてきた。
年が明けて
僕は僕らしくに取り掛かると、それがきっかけとなり
自由な音作りが できるようになった。
今でも、あのオケが完成し、プレイバックした時の至福の瞬間は、忘れられない。

そうして、
君は君らしく のレコーディングに入って行く。
花島(TORI−8)悟のギターソロが、この曲に生命を吹き込んで行く。
とても 肯定的な気分になって行く。

レコーディングも佳境に入っていった。
2ヶ月間 ほとんど誰にも逢わず、
そのやるせない気持ちは、
「君が好きだよ」 Song として実をむすんだ。
そして
それぞれの夏休みのレコーディングに入った。
この曲に取り掛かった時、「ああ、この曲で最後だ」という実感が有った。
これは アルバムの「ラスト トラック」だと。
そういう プレッシャーに弱い僕は、その曲を、終わりにふさわしい形に仕上げる自信が無かった。
その「ハレ」の瞬間を 誰かと共有したかった。
自分の為ではなく、そういう目標を完遂する為、ということならば、何とかできそうだと思った。
そして僕は、
山田華世に コーラスとして参加してもらうことにした。

たとえ擬似的だったにせよ、
それは、何かが終わり、新たに何かが始まって行く、という暗示だったのだ。
振返れば、過去、色々なことを中途半端にしてきた。
そのおかげで、決別とか、別れとか、旅立ちとか、
そんな当たり前のことを、経験しそこなって生きてきた。
それがやっと、初めて可能になる時が来たのだ。
そういう気持ちを込めて、アルバムのラスト トラック
それぞれの夏休みを歌った。
それを包んでくれたのは、素晴らしい
山田華世のコーラスだった。
僕は、まるで 二人で 卒業式をやってるような気分だったのを覚えている。
そしてプレイバック。
映画のエンドロールのように、この曲とともに、ひとつ、時代に決別できたのだ。

この作品集を 完成させるにあたり、
生命を吹き込んだ
花島悟と、魂を吹き込んだ山田華世には、
いくら感謝しても 足りないくらい、素晴らしいパワーをもらった。
こんな経験ができた僕は幸せだ。


華世

                  









Memories of 1996 Part 2


ひつじ SONGS !完成後、
あまりの出来事に 心理的バランスを崩した僕は、同志
西尾光夫の紹介で
「Nショップ」の2階の 「
V」という キャラクターショップで
バイトしながら リハビリすることにした。
ちょうど「
V」も、それまでの青山から麹町へ 店が移転したばかりで、
タイミング的にも、お互い ゼロからの出直し という感じで 良さそうだったが、
実際は、来店客も 数える程まで落ち込んでしまい、ますます 気が滅入るばかりだった。
出張販売などにも行ったが、気は晴れなかった。
このまま、自分は消えて無くなってしまうんじゃないか、とさえ思った。
季節も 3月で、一向に暖かくならず、
毎日毎日、緑色のキャラクター グッズに囲まれて、
音楽を聴きながら、ただ ボーッと過ごした。
そんな やるせない気持ちは
P.S. 渚にてという曲になった。

その後、
西尾氏 本来の 明るいキャラや、まわりの人々の明るさに助けられ、
徐々に ではあるが 自分を取り戻していった。
4月になり、新入社員や 新しいバイトの子などが入ってくる頃には、
また 自分自身を出せるようになり、いろいろな人と 本当に いろいろな話ができた。
こんなに、人と接して話をしたりすることが 重要だと思ったことは なかった。
僕は、自分が凄い奴だと思っている 天狗野郎だったが、実際は 皆も凄かった。
はるかに 自分では 考えの及ばないような事が 世の中には存在していた。
いろいろな人々と接し、自分自身の意識も かなり ここで アップ グレードされた。

いろいろな空気を吸い込み、再び曲を作る意味も見つかり、
それ以上居続けると 落ち着いてしまいそうだったのもあって、
6月いっぱいで 僕は お世話になった「
V」を去った。
これからは また 自分自身との勝負だ、と。
だが、月並みだが、このときに経験したことや 出会った人々のことは 一生忘れられないだろう。
もし僕に、最後の春休みと言うものがあるとすれば、このときだっただろうし、
これがあるからこそ 今 頑張っていられるのだ。


CD マルコ.ポール の中ジャケには、「V」時代の僕の写真が載っている。



       




たくみちゃんと…





It's over …



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